耐震強度に関しては、構造計算による明確な数字の確定により、その強度は保証されています。姉歯事件で改ざんによる操作は、より厳罰化された事で、構造計算の信憑性は相応に担保出来るレベルにあると感じています。しかし、断熱性能(UA値)と気密性能(C値)に関しては、かなり誤解されているように感じます。なぜなら、数値が低ければ低い程に性能が高いといった誘導の立て看板が目立つからです。なぜそんな事になってきたかを私なりの目線で分解して説明します。
断熱性能(UA値)と気密性能(C値)の誤解
そもそも、なぜ断熱性能(UA値)と気密性能(C値)なのでしょうか。
電気代を下げるため?
健康に暮らすため?
もちろんそれが表面に見える目的ではあります。では、なぜUA値とC値が電気代を下げて健康になるのでしょうか。実は、住宅を健康な状態にする事が本来の目的で、それが担保されて初めて電気料金が下げられたり健康に暮らせたりするのです。ここまでなら「じゃあ数値が低くて正解じゃないか」と思われるでしょう。しかし、値が低いだけでは住宅は健康にならないのです。なぜなら、住宅を健康にするのは数値だけでは叶わないからです。
電気代を下げるため?
健康に暮らすため?
もちろんそれが表面に見える目的ではあります。では、なぜUA値とC値が電気代を下げて健康になるのでしょうか。実は、住宅を健康な状態にする事が本来の目的で、それが担保されて初めて電気料金が下げられたり健康に暮らせたりするのです。ここまでなら「じゃあ数値が低くて正解じゃないか」と思われるでしょう。しかし、値が低いだけでは住宅は健康にならないのです。なぜなら、住宅を健康にするのは数値だけでは叶わないからです。
結露と断熱材と気密施工
では何が必要かと言うと、見えない場所の結露を発生させない事が必要なのです。なぜなら、躯体や木部に結露が付着すると濡れて必要水分量を超えると菌やカビが発生します。すると構造強度が低下したり、シロアリの発生を誘発します。他にも、屋内にカビの胞子が飛散すれば人体にも影響します。そのために結露を防ぎ住宅を健康に保つのです。
住宅には、見えない、あるいは見えにくい場所が必ずあります。壁の中や天井裏や床下になる基礎の空間です。ここに結露が発生すれば、気が付いた頃には手遅れになる程にその兆候に気付く事が出来ず手遅れになります。
結露はどうして起きるのか
結露は空気と急激な温度勾配があればどこでも発生します。空気には飽和水といって、目に見えない水分が含まれています。急激な温度勾配とは、空気が存在している場所にその空気温度とはかけ離れた物質があるとそこに急激な温度勾配が発生します。一般的には、窓ガラスや冷たいコップなどでイメージ出来ると思います。冬の寝室でも人の呼気によって空気中の飽和水量が高まり、朝起きると寝室のガラスだけ結露している現象もしばしば見られます。その結露が窓ガラスに発生するのは目視出来ますが、それが壁の中で発生すれば気付く事はできません。1ミリでも隙間があれば空気は存在しますし、温度差が発生する場所にもなり得ます。その結露を目に見えない場所で発生させないようにする為に、断熱性能と気密性能を上げる必要があるという訳なんです。
ここで気を付けていただきたいのが、数値先行でUA値が低いから大丈夫、にはならないということです!なぜなら、UA値は机上の計算だけで算出できるものであり、実際の現場状況によって数値は大きく変わってしまう、という事を知っておく必要があるからです。
ではまず、イメージしやすい様に、数値の算定の仕方を簡単に説明しますね。まずUAの算定ですが、熱を守る役割の断熱材面積から熱を逃してしまう部分面積を引いた数値です。断熱材には、種類や材質、厚みにより、熱をどれだけ通すかを表す「熱貫流率」という計算値があります。一方で熱を逃してしまう部分というのは、サッシや玄関ドア、そこに付帯するガラスなどを指します。もちろん、アルミや樹脂で熱伝導は違いますので決められた計算値は違いますし、当然ガラスも複層か、ガラスとガラスの間は空気なのかガスなのかでも計算値は違います。これら全てが机上計算で算出します。言ってみれば、図面と仕様さえ決まっていれば、建物が存在していなくてもUA値は計算できます。
UA値だけでは性能は語れない!
しかし、このUA値には欠点があります。それは、その数値だけでは性能が担保されないということです。では性能(断熱能力)を担保するためには、材質の「劣化」を加味することと、やはり「気密性」が重要になってくるのです。よく家を魔法瓶に例えて表現されますが、断熱材は魔法瓶の素材と同じです。ペットボトルより魔法瓶の方が熱を通しにくい素材でつくられていますよね。また、魔法瓶はパッキンをつかって蓋をしめるので、密閉性が高い事で中の温度を保つ効果が高い訳ですが、これに当てはまるのが「気密性能」です。家の隙間をどれだけ少なくできるかで、中の温度を保てるか、なんです。つまり、断熱材にどんな材料を使い、その材料の断熱能力を生かすために、隙間を人の手で丁寧に埋めた上、どの工事段階で気密測定するのかということが重要になり、UA値とC値はセットでなければいけないのです。
C値は実測でしか測れません!
気密性能を表すC値ですが、これは建物一軒一軒で違います。もちろんUA値も一軒一軒で違いますが、C値は、実地測定になります。その建物ひとつひとつをその建物で機械測定するしかないのです。測定する機械は何社かありますが、建物の内部の空気を測定器で強制的に吐き出して、その抵抗値を数値化します。イメージするならば、飲み物が屋内の空気と捉え、そこに測定器である人がストローを刺して吸い上げます。ストローに穴が空いていると吸い上げにくくなり、穴の大きさによっては吸い上がらない事もありますね。これが気密測定です。ならば、気密測定は、内装施工が始まる前に行わなければ、壁や天井裏や基礎で結露が発生する場所になってしまわないかを立証することは出来なくなります。
測定するタイミングも大切
よく、完成してお引き渡し前に気密測定を行っている工務店がありますが、それでは測定タイミングはアウトです。なぜなら、気密性能を発揮している層が、壁や天井裏や基礎なのか、部屋の仕上げ面なのかが分からないからです。しかも断熱層から順に、空気層がありプラスターボードがあり壁紙などの仕上げ面がいくつも重なっているので、当然隙間からの空気の吸い込みは困難になり、気密測定値はgoodの方に振れて行ってしまい、何のための気密測定なのか、その意味をなしません。
床下こそ換気
更に、よく見かけて私が不安を感じるのは、1階の床断熱です。1階の床裏に断熱材をはめ込む施工方法ですが、基礎エリアの断熱がなされていません。という事は床下の結露対策は除外された発想なのだと思われます。基礎はコンクリートであり、コンクリートは熱を蓄える性質があります。すなわち、昼間に蓄えられた温度は夜の気温差で結露が発生しやすい環境になります。また逆も同様です。木造なら1階床より下にも木があるので結露すれば容易に白蟻を寄せ付ける材料が揃う事になってしまいますし、鉄骨なら鉄骨自体に結露が発生してしまいます。更に基礎は間仕切基礎と言って、1階の床の下は基礎に囲まれた小さな部屋の様に区画されています。と言う事は、床下の基礎全体に換気が行き届かず、床下エアコンにしたとて行き届かず、エアコンのある区画だけ温度が変わり余計に結露を助長する環境になってしまいます。
この事から、床下の基礎は室外とみなすにはかなり危険な判断と言えます。また、床下こそ、換気と断熱性能が重要だと言えるのです。
この事から、床下の基礎は室外とみなすにはかなり危険な判断と言えます。また、床下こそ、換気と断熱性能が重要だと言えるのです。