①建築家の定義
実は、建築家という定義はありません。世間では建築士の資格を所持していると建築家と紐付ける考えもありますが、資格があれば建築家になれる訳ではありません。例えば、料理研究家で言えば、調理師の資格を持っていても料理研究家とは言わないのもそうで、むしろ世の中の評価が料理研究家として認めています。本人が宣言するのは自由ですが、世間評価が全てと言って良いでしょう。
②秀でた能力と才能
建築家は世間から認められる能力や才能があります。建築士の資格は建築法規を熟知して、一定の能力試験に合格した人が建築士としてのライセンスを所持出来ます。建築家と建築士は全く違うものという事です。では、建築家はライセンスを持っていないかと言うと、圧倒的に建築士の資格所持者が多いですが、稀に才能と能力が評価されて建築家としていらっしゃる方も存在します。例えば、自動車運転ライセンスを持っているとF1レースのドライバーになれるかと言うとそうではない様に、資格を持っていても能力と才能が付いてくる訳ではないという事です。ハウスメーカーや工務店には建築家は存在しません。なぜなら、多くの建築家は、その秀でた能力と才能を発揮したいと、組織で生きる事を望まないからです。独立しているからこそ能力が遺憾なく発揮されると言えます。ハウスメーカーや工務店は、ほぼ営業マンが顧客の要望を聞いてプランに置き変えますが、それは建築も住宅も分からない人が望んだ事を盛り込んだだけに過ぎず、なぜそれを望んでいるのか、深層心理までヒアリング出来るものではありません。言われた事を敷地の中に収める。テトリスと言うゲーム機の様にいろんな形を隙間なくハメ込んだだけでは、望みを抜本的に叶えた事にはならず「確かに要望は入っているけど…」と、どこか満足に至らない、そんな現象に陥りがちです。
ヒアリングとプランの関係
何度も何度も、いくつもいくつもプラン提案を望む事は、いけない事ではありませんが、たくさんプランを見てしまうと、そもそも望んでいなかった間取りを選んでしまい、気付いたころにはもう戻れない状況に…。なんていうのもよくある話です。そもそも、いくつもの間取りを見なければいけなくなるのは、設計側のヒアリング不足なので、望んでいる事に到達していない可能性が大きいとも言えます。お見合いに例えると、会えば会うほど理想パターンが複雑化してしまい「前回の方はあったが今回はない、でも前回の方はここがマイナス評価だったが今回は良い」など、求める理想が端的になっていってしまい最終的には選べなくなってしまう。そんな心理とよく似ているのかもしれません。
建築家はこの「ヒアリング」をとても大切にしていて、お客様の要望を上手く引き出してくれます。このヒアリングこそが、建築家の能力が発揮されるもっとも大きな部分でもあります。そのため、しっかりとした望みを持って、建築家のヒアリングの場で伝えられる様に準備しましょう。
建築家はこの「ヒアリング」をとても大切にしていて、お客様の要望を上手く引き出してくれます。このヒアリングこそが、建築家の能力が発揮されるもっとも大きな部分でもあります。そのため、しっかりとした望みを持って、建築家のヒアリングの場で伝えられる様に準備しましょう。
③要望の具現化
建築家のヒアリングは一見、世間話をしているようで、生活の癖やスタイル、好みや優先順位、もっと言えば、家族のヒエラルキーまでも感じ取っています。例えば、お客様が「部屋が広い方がいい。」と仰ったとしても、ただ面積を広く取るようなことはしません。その部屋の用途は何なのかだったり、広くした時の使い勝手だったりを考慮して、ご家族の暮らしが始まった後を想像しながらプランを組み立てていきます。例えば視線の先が外につながるような広がりを感じる間取りや、吹き向けや梁天井など頭上を高くすることで広さを感じられる空間をご提案することもあります。お客様の要望の深さと振り幅を素晴らしいデザインで具現化してくれるので、要望通り、あるいは要望以上の空間が実現できるのです!
④依頼費用は?
建築家でも、国立競技場や美術館などをデザインしたりするような世界的にも有名な建築家に依頼すれば、総工費の50%などとても現実的には考えにくい設計費がかかります。どちらかといえば、住宅設計では稀な例です。では、住宅設計で有名な建築家に依頼するといくらくらいかかるのでしょうか。ザックリ相場で言えば、15〜25%です。更に感覚的に言えば200~300万円前後といった感じです。一見、建築家に払う費用が掛からない方が予算を建物や増床に置き換えられますが、出来上がる住まいの満足度の差を考えれば200~300万円は決して高い費用ではありません。また、近年では、R+houseのように有名建築家でグループをつくり、設計料を抑えてくれる仕組もあります。
⑤補足(重要)
実は、カッコ良くて憧れるような住宅は、工務店能力が密接に関わっています。建築家が造るデザインは良くても、選ぶ素材やコーディネート、もっと言えば照明計画も、それ相応の能力が無ければ建築家のデザインは生かされず、なんだかイマイチな仕上がりになってしまいます。おおよそ、建築家と関わって住宅づくりを望む、そんな仕組みにしている工務店さんは、建築家のデザインに携わっている事で、建築能力が高い工務店とも言えます。制限のある建築しか出来ない工務店は建築家のデザイン能力についていけないのが現状です。根拠の薄い「大丈夫です」「安心してください」「自信があります」「任せて下さい」口先だけの約束は、期待しない方が良いでしょう。契約してしまってからでは、言った言わないを繰り返して要望を叶える方に覆す事はとても困難です。普段から根拠を持って仕様を決めて施工している工事会社さんを選んで下さい。職人さんは、いつもの施工方法に慣れていますので、いつも工事でやっていないルールは出来ないものです。逆に言えば、丁寧な仕事をされる職人さんは普段と違い、手を抜く作業が苦手です。そこをちゃんと見極めるには、やはり実例を実際に見てみる事をお勧めします。モデルハウスも良いですが、実際にお住まいになられる家だと、お施主様のこだわりと要望、それに対する建築家のデザインが呼応しているかが見えるので、分かりやすいですね。ぜひ、信頼できる住宅会社と建築家と、素晴らしい家づくりを叶えて下さい。